nekoyanagi0777’s diary

僕の/私の 脳内メモリー

忘れてはいけない感覚を鮮度の高い状態で永久保存するべきなのだ

今日の帰路はプロコフィエフの自伝や英語のニュースを読まずに、今日の出来事をここにしたためるべきだ。

今この新鮮なうちにしかきっと出来ないだろう。

最近、本当に文にすることが減った。

それほど大きいことも無かったから。

だから今日は勉強や練習を投げてもやるべきだ。

熱が、冷めてしまう、鮮度が、落ちてしまう、僕のこの今を生きている証が薄れてしまう。

 

「途中で帰りたそうな顔してたでしょう」

さぁ、僕があの人の話の途中でそんなことをした天邪鬼な理由を、紐解こうじゃないか。

 

 

今日の18:00すぎから作曲コースの成果発表があるらしい。

そこそこの友人がそこに出る。

見にいきたいと思ったのはあれは11:00すぎだった。

そう思いながら僕はサックスのレッスンを受けた。

レッスンの最後、「18:00から空いてますか?」と声を掛けていただいた。

それは大変素晴らしい先生たちトリオ合わせの譜めくりという貴重なお誘いだったため、お願いをした。

これで成果発表は聴けないことが確定した。

 

時間が経って、ピアノのレッスンが17:30に終わった。

18:00に部屋に出向く。

よろしくお願いします。

合わせが始まった。

プロの3人が合わせをするとこうなるものか、あぁ綺麗なヴァイオリンだった、ピアノもちょっと弾いただけであんなに音が出るものなのだ、サックスに至っては惚れそうになってしまった。

フランス語と日本語が行き交う耳に心地いい1時間だった。

ここで得たものは沢山ある。

 

ピアノはやはりほろほろと弾いているように見えて指先がクリーム色になるほど力を入れている。

あそこは何故ああやって弾いたんだろう、理由が何にでもあるんだろう。

僕だったら最初からこうやって弾けないだろうなぁ、でも聴いてみるとやはりこっちの弾き方の方がマッチするのだろう。

ペダリング、指番号、調の変更、手の入れ替え。

過度なメモはそんなになかった、身体に染み込んでいるのだろう。

ヴァイオリンのあの細やかさは本当に巨匠の演奏だった。

しかしながらチャーミングでキュートな部分がある。

「...begin.」 「....begin!?」

日本人にはあまり無いあのチャーミングさ、フランス人ぽいと言うのだろうか。

サックスの溶け込むような音。

最初に気になった高音の音程を2回目にはすっと直していた、本当にすごい。

サックスとピアノが一緒に弾いてるのか、それともピアノだけで弾いているのかわからないほどの溶け込み具合。

ありがとうねと言われたそのあと、思わず 楽しかったです と割と興奮気味に言ってしまった。

格好いい3人だ。

 

さぁ、帰ろうかとして何となしに4階へと行く。

やはり、友人の一人がコーヒーと共にそこに居た。

いやこんな貴重な経験をしてきたのだ、と回顧する。

エレベーターが開く、数人が出てくる。

気にしていなかったのに、友人はそこであの人を見つけた。

おーー。とローテンションにあの人の登場を迎えた。

声をもっと張ればいいものの、あの人は張らないからよく聞かないと何を言っているのか分からない。

でもその声はやっぱり包み込むようなものだった。

 

実は作曲コースの成果発表を聞いてきたのだ、と話し始めた。

珍しいですね、と言うと行かなくてはいけない役割があったようだ。

でも講義を受けてくれている人が沢山いたから少し見に行った。と。

そこで感じたことが沢山あるようで、丁度演奏者の友人一人が来たので僕たちに話してくれた。

 

友人が書いた曲を弾くというのは昔の曲を弾くものと違うものを感じるのか。

演奏者の考えが表に出るような演奏だったが、作曲者の友人がどのような意図でここのフレーズを作ったかを聞いたりしたのか。

すると解釈学の話。

解釈学では解釈は例えば文献や資料を見ながらベートーヴェンはきっとこういうことを思ってたに違いない、というベートーヴェンも知らない他人から見たベートーヴェンの特性を考えるということを定義するらしい。(ここで僕は教育相談で見たジョハリの窓の未知の窓を思い出した)

そして当然私たちはベートーヴェンにどうしてこのように書いたんだい?と聞くことは出来ない。

今回の成果発表では、ハイドンのように昔の人ではなく今ここにいる学生が作曲者なので、本人がどのような意図で作曲をしたのかが聞ける。

その人についての文献を読むわけではない、つまり解釈学上では解釈ではない。

直接に聞いて演奏して、そうすると演奏者の考えが出るものなのだろうか。

とにかく、今回の友人の演奏は作曲者寄りというより演奏者寄りの演奏だったという話。

机に向かう研究や発表と、作曲と演奏は同じだと思ったこと。

作曲は文献などを調べる研究、演奏はその研究の発表に当てはめたこと。

 

そこからあの人は一度4階の住処へと帰った。

あぁ、会えてよかったなぁと心だけで思っていたら、あの人は一冊の本を片手に戻ってきた。

そこから1時間くらい話をしたんだ、これもとても意味のある対話であった。

 

この本知ってますか、と言いながら音楽についての本を紹介してくれた。

そして新書と文庫本の違い。(新書は現代に根差した本であるのだ)

あの人の学生時代のサークルの話。(ここで僕はこの話は自分たちが茶化しながら話すだけにもう留めておこうと思った)

そこから僕が教職で必要な作曲の授業をとっている話。

今まで作曲を経験しないで演奏してきたが、作曲を経験するのは演奏する上でもとても有意義だということを話した。

私が意味するのは、つまりこういうことであって。

私はいざ作曲してみて、ここでこう弾いてもらいたいからこう書こう、というプロセスを踏んでいることが分かった。ミヨーたちもこうやって作曲をしているのだろうと考えると、彼らはこうやって弾いて欲しいのではないか、という逆アプローチ的に演奏という行為が分かってきたのだ。

研究や音楽という広義の違う分野でも、作曲と演奏という狭義の違う分野でも、何か共通点を見つけると大きな意味を得るという教訓のこと。

犬が飼いたいんですか、あ、柴犬ですか、僕はシベリアンハスキーがいいですという話。(僕のTwitterを見てなのか、見事あの人は僕の好きな犬を言い当てた)

お母さんは神社の方なんですか、100匹も生き物を飼ってたんですかという話。

ここらで、いやこの人意外と話聞いてなかったりするんだよ、と僕のことを笑いながら話したあのトーン。

オンライン授業の話。

僕のコメントが長いんだとこれまた笑いながら褒めているのか困っているのか分からないが、多分喜んでいる話。

そのコメントが改行の関係でか右に寄っていて読みづらく、内容を見ると あ、また脱線した、と面白がって読んでくれていた話。

あんなに書けるのは素晴らしいことですねと言葉を置いたあの 僕らとの立場の違い が露わになった刹那。

この先生の講義は是非受けた方がいいよという話。

スタバでは今イベントをやっているという話。

自分の学生時代のように、東京駅の丸善モレスキンを見に是非行ってくれと勧められた話。

前任校の話。

今でも連絡がたまに来て、どうしてるかなと気にかけながら過ごしている話。

心の中で自分もそんなような類の一人でしかないのだなと改めて思う苦しさ。

帰路にいる柴犬の話。

対面授業の即興性は大事なポイントだが、オンラインも対面も利点があるものの目的によるという話。

初等、中等学校ではオンラインでは出来ないもっと道徳的な学校行事があって、同時に大学ではそれほどそれは重視されないという話。

青と黄色の本の話。

本に乗っている対談は本当に即興的なのかという話。

京大がオンライン授業をYouTubeに出してくれている話。

倫理学を勧められた話。

音大は本当に専門的で、中世の大学的であるという話。

 

 

 

この1時間で僕は1年前を思い出した。

あぁ、この感覚だ。

新しいものを得る感覚、既存のものから新しいことを生み出す感覚、それを深める感覚。

それらを僕は音楽へと応用していたんだ。

あれから僕は立派だと思う。

 

 

 

つまり僕は音楽でとんがりコーンになると、他の専門とも十分対等に話が出来るという事実をしたためたかった、本当は。

将来の自分はこれを見て、それをきっと汲み取ってくれるだろう、自分の記憶を遡って。

これは鮮度の高い文章となった。

僕は来世で哲学を勉強して哲学者になるし、再来世ではSHIROBAKOとやらを見まくるが、今世では音楽を十分に深めればいいのだ。

趣味で、しかも思いっきり、それはそれで、自分の好きな学問をすれば良い。

今は胸を張って音楽というvaluableなものを深めようじゃないか、とことん学ぼうじゃないか。

 

 

天邪鬼な僕はこんな濃い対話の途中で帰りたそうな顔をした。

真剣に興味深そうに聞いているのが自分の気持ちが露わになっているようで恥ずかしいという小学生的な理由で。

そんな僕は今日のことを熱心に綴ったあの人のツイートにもいいねを押さない。

できればプロコフィエフの名前をもう一度忘れて欲しい。

そしてまた僕に聞いてほしい。

のに。

全て天邪鬼で。

 

 

ある時あの人の研究分野の会合がいくつか行われた。

SNSが活発になる。

とても楽しそう。

こんなの見たことないや、本当に興味ないんだろうな。

かろうじて興味があったとしても、やる気のある学生の意欲に湧くくらいだろうな。

 

やっぱりあなたは研究者なんですね。