nekoyanagi0777’s diary

僕の/私の 脳内メモリー

好きだった高級なドリップコーヒーを添えた。

安らか、本当に安らかで...。

 

初めて父が目を赤らめているのを見た。

父は言葉をつまらせながら、涙が流れないそのうちに挨拶を終えた。

グラスの合わさる音。お箸の音。鼻をすする音。

ここ数日涙を堪えてばかりいる。

止まらない。

しっかり隣にいれば良かったな。

日々の忙しさで大切なものが霞んでしまったように思う。

もう戻れないし取り返せないと思うといつまで経っても目に涙が浮かぶ。

 

 

 

 

 

最初は心の準備ができていなくて目の当たりにした時はショックが大きかった。

果てはこうなるのか。

見ていられない。

でも橙色と桃色が合わさったような自然な色だった。

苦しまないように。

丁寧に、厳かに、綺麗に。

衣を変える時も自分を含め三人が見届けた。

そして全員で運び入れた。

道に迷わないように、旅の途中で衣服が脱げないように。

旅への準備が整ったようだ。

 

 

 

 

目を開けているのと比べると心が痛い。

昨日の準備を経て始まった。

綺麗な花を一人一人が沢山置く仕草を見るだけでも、お疲れ様と話しかける親戚を見ても、綺麗になっちゃったねぇ と話しかける祖母を見ても、主人へ と書かれた封筒を見ても、ひとつひとつの場面が涙を誘う。

千羽鶴、綺麗な花、手紙、好きだったもの。

持っている花が歪む。そっと置く。

最後になります、と言われるとまた涙が出てしまう。

花いっぱいに囲まれているのを見る。

こんな厳かで華やかな二日間。

この豪華な様子を感じられているかな。

分からないな。

 

幸せなのかな。

 

幸せなのか。

 

幸せなんだな。

 

 

これからどうなるんだろう。

分かっていたけど初めてだったから実感が無かった。

車に乗って場所を移動した。

涼しく物々しいこの建物。

入ると次第に暑さを感じるようになった。

あぁそうなんだな。

そしてぱっちりとした写真と共に、信じられぬまま部屋へ入ったのだ。

 

 

 

安らか、本当に安らかで....。

 

挨拶の後、涙なしには食べ始められなかった。

喉を通らない。

親戚が自分の通う大学の出し物を前に見たんだよと話しかけてきた。

素敵だったよ、と。

するとだんだん落ち着いてくる。

これだけ集まった会だから、色々な話をした。

 

 

 

 

放送が流れ、さっきの場所へ戻る。

閉鎖的な雰囲気。

係の人が何か持ってきた。

そうか、これが残ったものなんだな。

人は皆そうなる。

箸が二本、大きなガラスの壺。

さっきまで居たじゃないか。

橙色と桃色はもう彩られていない。

これから顔と顔を合わせられないんだな。

家に帰った壺と写真は 帰ってきたね と祖母に話しかけられていた。

安心だね、と。

状態は違えど、帰ってきたんだ。

自分の住んだ家だ。

 

 

親戚が撮った、あの最後の写真を一枚もらった。

最後の写真、しっかりと持っておくべきだ。

忘れずにおこう。

最後はこんなにも辛い。

大切なものを見失わないように。