nekoyanagi0777’s diary

僕の/私の 脳内メモリー

その声は彼女だった

僕の受験日が明日に迫っているというのに、彼女は大した言葉を掛けなかった。

 

いつも通りに時間が流れるよ。

僕の担任の現代文に始まり、僕の嫌いな日本史Bで終わる4時間。

5.6時間目の応用英語は明日に専念するため早退届けを出した。

と言いつつも、5時間目、僕はお世話になった図書室の先生のところにこそこそと行く予定。

 

お昼を食べた後、3階に行こうとするRちゃん。

「ねぇ、途中まで行こう」

気がつくと話しかけてた。

少しの刹那二人で歩きたかったんだよ、なんせ受験前日だから、さ。

「明日なんだねー」

彼女は先に話を切り出してくれた。

図書室までの道のり、安心したよ、彼女、ありがとう。

 

図書室に着く。

図書室では先生と、明日のことからこれまでのことなど、色々話をした。

落ち着いたよ、先生、ありがとう。

 

家に帰ろうとした僕は友達から聞いた、"担任の先生がなんか呼んでたよ"を思い出した。

ゆっくりと西棟に行こうとする僕、なんせSちゃんからまだ激励の言葉が無いのだから。

 

何事もなく西棟に到着。

"トントン、失礼します"

面接練習かのように僕は担任の先生のいる部屋へ。

"僕のことお呼びしなかったですか"

いや頑張ってねってだけだよ、と照れ臭そうに言う先生。

なんだ、先生も可愛いところがあるじゃないか、なんだか嬉しいな、と男ながらに思う。

僕も少し照れ臭そうに頑張りますと返す。

ありがとう、見直したよ、担任の先生。

 

今度こそ家に帰ろうとすると、もっとスピードが遅くなる。

呼び止めても良いんだぜ、僕はもう帰っちゃうんだぜって身体全体で表現してる。

彼女がまだいるかさえも分からないのに、意味の無いかもしれない踠きを、ラストのチャンスにかける。

 

あれはラウンジを通った時だろうか。

声がした。

男と女の声が。

その沢山の声の中あの声を探してみる。

"これは、この声は、彼女。"

あぁ、紛れもない彼女だった。

僕のことなんて気にしてないみたいだった。

あぁ、その声は彼女だった。

きっと何を感じるも無くあの笑顔で笑ってるんだ、女と、他の男と。

 

外は雨が降っている。

雨の中傘を差さずに歩き出す、早めのスピードで。

"彼女、君なんかな、担任の先生以下だ"

雨が僕の瞼を撫でるよう、その雨を吸うのは地面だった。

コンクリートの匂い、あぁこの地面はコンクリート

 

こんなことしてたから受験当日に風邪引いたんだよなぁ。