--ああ、この感覚かぁ。
ついにはこんな夢まで見るようになってしまった。
彼女と僕が帰り道を共に歩く。
バスを待つ僕たち。
どうやら話は盛り上がっているようだった。
バスが来る。
僕は告げる。
"一本次のに乗る"
僕はきっと、まだ君と話がしたいんだろうな、夢の中でも分かった。
彼女は照れくさそうに次のバスまでの時間、話している。
バスは僕らを追い立てるように来た。
"じゃあね"
僕は彼女の肩をトントンと叩きながらそう言った。
その人肌の感触が全身に伝う中、バスへ運ぶ足は、とてつもなく軽かった。
バスの中で感じるのはただただ幸福感だった、あの時感じた幸福感だった。
--ああ、この感覚かぁ。
僕はその感覚を現実に持ち込もうと、不意に中学の帰り道の記憶を探した。
中学校から自分家までの短い帰り道を、ゆっくり大切に小さな彼女と帰っていた、それはもう桃ほどは甘くないけど、苺ぐらい甘くって、レモンほど酸っぱくないけど、グレープフルーツぐらいは酸っぱかった。
その感覚だよ。
夢にまで彼女が出るようになった僕さ。
今はもうRちゃんの影は薄かった。
あの感覚また感じてみないか、兄弟。
何を恐れて止まっているんだ、兄弟。
囁くなよ、そんな誘惑を。
もう昔の僕とは境遇が違うんだ。
でもやはり夢から覚めた僕は幸福感に満ち溢れていた。
ほらだって、この幸福感を忘れないように一生懸命朝六時、ここに綴っている。
現実には色々考えることが多すぎる。
夢のままで良かったのだ。
覚めなければ良かったのだ。
君が僕の夢の中まで来て、僕を君の夢の中まで連れ去ってくれれば。
バスを何本見送ったって良いよ。