君は言った。
学校にいるんだったらバイト先に来てよ
と。
あたしに会えるだけだけど
笑、を付けて彼女は言った。
やだよと、天邪鬼な僕は言う。
嫌なもんか、本当は会えるか少しドキドキしてたさ。
じゃあもう行くから、来たくなったら是非
って言うもんだから。
僕は一言返した。
のど飴をサッと買ってサッと帰るよ
既読は無かった。
僕は案の定君のバイト先に行ったよ。
君にしてやられたと思いながら、ゆっくり歩いたよ。
そんな僕は本当にのど飴をサッと買ってサッと帰ってしまった。
君に会うことはなかった。
帰りのバス、ちぇ、と思いながら、なんだこれ、僕が今、手に持つのど飴と、この胃や胸や喉のムカムカ気持ち悪いのだけが産物か。
ああ、このムカムカ感だよ、これだよ、これ。
食べられないなんて大丈夫!あたしと一緒に練習しよう!なんて嫌だからね。
一緒に背負って欲しくないんだよ。
一緒にいると気持ち悪くなりますってそんな恋、冷めるに決まっているだろう、君が。
そうは言っても、どんなことにも負けない僕を君に創って欲しいのは欲しいんだけどね。
そしたら。
そしたら。
何も阻むものは無いか?
でもそれが大きいんだよな。
もう。
もう僕無理だよ。
そんなこと考えているうち、のど飴を買いに君のバイト先にサッと行くよ、と宣言してしまったメッセージを見返した。
会えていないわけなんだから、メッセージは消したほうがいい、そう思った。
だって、あー来てくれたんだ会えなかったねごめんね、なんて言われるのはなんだか気に食わないじゃないか、僕がまるで会いに行きたくて行きたくてしょうがなくて行ってるみたいじゃ無いか。
そんなの、そんなのずるいだろう。
バイトの終わった君は、君のバイト先に行かなかった体の僕にメッセージで言う。
来てくれれば良かったのにー
そんなの行かないよ、と僕は軽く言った。
僕が君のバイト先に行ったことを知るのは、僕しかいない。
なんだか寂しいな。
なんせ産物はムカムカ感とのど飴だけなんだもんな。
あぁ君はどんな僕も愛してくれるかなぁ。
デート中に噯気が出る僕も。
気持ちが悪い、と悲しむ僕も。
弱点をさらけ出す僕も。
どんな格好悪い僕も。
愛してくれるか。
どうかな。
無理だろう。
僕も自分を愛せない。