なあ、僕の元彼女や、僕ら何がいけなかったんだろうな。
今、君のことを考えていたよ、いや、未練とかじゃなくて、何故僕らは上手くいかなかったのか、ただその原因を探りたくて。
今さっき、君を彷彿とさせることがあって考えていたんだ。
僕は今、黄昏てるんじゃない、憤慨しているのさ。
彼女は言った。
電話できる?
僕は今は外にいて風邪をひきたくないから少しなら良い、8時になったら知らせてくれ、とハンズフリーで君と話した。
風邪をひきたくないから本当に8時になったら知らせてくれよ、と念を押した。
話が盛り上がっている中、僕は妙に時間が気になって聞いた。
あれ、今何時?
君は少し笑いながら8時9分、とだけ言った。
言ってくれって言ったじゃないか、僕の返したその言葉のトーンにはユーモア的なものは無かった。
いや8時2分に気付いたんだけどね、と笑いながら君は言う。
僕はじゃあなんで言わなかったんだ、と理由を求める。
あの時みたいに確かな理由を求める。
少し興奮した僕は誤魔化して電話を切った。
これだけなんだ。
これだけなんだが、これがとてつもなく重い。
君は、僕の切実な約束を守ってくれない昔の彼女を思い出させた。
昔の彼女は何度言っても直らなかった。
それが僕をどんなに苦しませたか。
その辛い思い出を、君は、思い出させてしまったのだ。
した事は小さくても罪は大きい。
寒いよね、もう8時だから切ろうか。
こんな気持ちが少しはあっても良いんじゃないか、自分の欲望のまま動いてくれるな。
本能でしか動けない?動物と一緒じゃないか。
ほんの少しなら目を瞑ってやればいい、しかしその少しを見過ごした結果が昔の彼女だった。
もう金輪際、昔のように相手について悩み続けたくない。
一緒になると自分の人生を少なからず相手に捧げることになる、そしてお互いがお互いを思いやり、良い関係を築いていく。
それなのに良い関係を築くなど愚か、自分の人生を蝕まれ、何から何まで奪い去っていくなんて、そんなの何の得もないじゃないか。
もし君が僕と一緒になったら君は僕のことを本当に考えてくれるかい?
僕を自分のことのように大切に思ってくれるかい?
二の舞にならないでいられるかい?
君と一緒になる可能性を考えていたから、こうやって真剣に悩んでいるんだ。
しかし君はもう昔の彼女を彷彿とさせてしまっている。
僕は君と一緒になることについて、もう少し考えを張り巡らせなきゃいけないみたいだ。
僕は昔の彼女を忘れさせてくれるくらいな人と一緒になりたいんだ。
なあ、僕の元彼女さんよ、僕らどうすれば良かったんだろうな。
君の所為でな、正しい愛し方も、素敵な愛の紡ぎ方さえも、忘れてしまったんだ。
君の所為で。