今でもふと思い直す。
戒めのように。
自分は特待を取れなかったんだと。
自分より綺麗に弾ける誰かが同じ大学にいる。
大学では自分もその人と同じ土俵で戦うことになる。
しかしこの既に開いている差を縮めることはできるのか。
こちらが努力をしても、あちらも同じように努力をするだろう、平行線のままではないか。
そもそも特待で入ろうとして少し下げて受験をしたんだ。
そこで負けていては、本当にもう負け犬じゃないか。
芸術のセンスは、作れるもんじゃないだろう。
ふと思うんだ。
負け犬で4年間が終わるんじゃないかと。
常に上がちらつく状態で、過剰に負けを感じる自分が、4年間、大して面白くもない演奏を続けるんじゃないかと。
その人たちより練習すれば良い?
それだけで良いのか。
簡単か?
いや一番困難だろう。
それを続けられる精神力か?僕は。
怖いよ。
4年間が楽しみでもあり、怖いんだよ。
なんせ生身の自分が経験の産物になるんだから。
ピアノを弾いてると少しの刹那、失望感に襲われることがある。
あんなにもてはやされた僕は所詮音大生の中の一人。
卒業式の伴奏を任されても、所詮音大生の中の一人の演奏。
上を見上げれば数え切れないほどの人がいるだなんて、そんなの分かりきっていたことじゃないか。
でもその場面にいざ出会すと、もっと大きな圧がかかってくるんだ。
対処法は、周りより練習すれば良いだけだろう。
分かってるよ。
分かってるけど、自分をもっと違うものだと思っていたから、だから踏ん切りがつかないんだよ、分かるだろう、なあ。
大晦日。
今年は終わる。
何をすべきだろうと考えてみた。
あんまり出てこない。
特にあせあせしないでも良いんじゃないか。
だって今年が終わるんだ。
終わりの日くらい。
リストに必要以上に追われなくても、良いんじゃないか。