nekoyanagi0777’s diary

僕の/私の 脳内メモリー

あ、じゃないんだよ

3daysインターン初日。

 

渋谷で行われる。

 

服装は自由だったが、初日は様子見、とスーツで行った。

 

スーツだと髪を結ぶデフォルトなので、前髪無し勢にはお洒落がしづらい、まぁそもそもインターンはお洒落なものでは無い。

 

しかし心の持ちようはそれでいくらでも変わってしまう事実である。

 

渋谷への行き方はいくらかあった。

 

いくつか調べて下北ルートを選んだ。

 

理由は明白。

 

もしかしたら会えるかも、を望んだのだ。

 

たまたま下北で会ったあの時から、今までろくに挨拶もしていない。

 

学校の、あの4階で、あんなに偶然的か必然的に会えていたのに。

 

この数ヶ月で自分の望みは全て打ちひしがられた。

 

今日も会えずじまい。

 

姿を確認できても、挨拶してくる気配も素振りも何も無い。

 

ただ、お昼の時間に、新しい1年生の質問に残って答える姿を見ることしか出来なかった。

 

あの人への志向が消えかけた、そんな中のインターンシップ

 

自分の将来のことなので、メモする手も素早い。

 

それをちょくちょく見て「めっちゃメモするじゃないっすか」と話しかけてくる。

 

同じチームには、"人生楽勝っしょ男"が居た。

 

最初はきらりと光る笑顔、誰とでも打ち解けるコミュ力に惑わされそうになったが、彼はややもすればクラッシャータイプ、油断するなかれ。

 

その彼と、私と、女の子、この3人で3日目にはプレゼンテーションをするらしい。

 

今日は、少しチームでまとめて意見を言う場があった。

 

その時、「警戒ランプ」が頭の中で点灯した。

 

2回あったワーク、楽勝男は皆の意見をまとめると言うより、自分の意見に付属させるように私たちの意見をまとめているではないか!

 

「〜って感じでいいっすよね」

 

良くない。

 

概して良くない。

 

私たちは君の意見のおまけか!

 

帰りの時も、明日の課題について楽勝男は言ってのけた。

 

「あの、明日の選挙の課題、なんか難しそうだよねぇ」

 

「あ、あれ?アプリ作っちゃえばいけるっしょ」

 

いけるっしょ、じゃない。

 

「警戒ランプ」、激しく点滅中である。

 

 

 

 

 

少し体育会系が多いのか、そういう人が人事のトップだからそう見えたのか、この会社の事業内容としてはとても良かったが、この環境で仕事ができるかは考えなくてはいけなかった。

 

またキャリアセンターの人に相談しよう。

 

明日、明後日は今日以上に得るものが大きいだろう、楽しみである、自己成長だ。

 

インターンお腹が空くだろうなぁと思っていたが、会社がお菓子を出してくれたため、やっぱりお腹が空いた、うん、お菓子を食べても空くものは空くのだ。

 

渋谷のお洒落なカフェでも行こうかと思ったが、スーツで行くのは気が引けた。

 

結局スタバにした、下北の。

 

そういえば、と"もしかして"を望んでいたのを思い出した。

 

意識的に下北のスタバにしたのだ。

 

友達に、前先生に会ったところに来ている、とメールをした。

 

そう、あれから何ヶ月もろくに挨拶出来ていない。

 

その何ヶ月も前、偶然的に出会った場所。

 

DMをしようか迷ったと後で告げてくれた、あの場所。

 

でも、今回はただドリップコーヒーのショートとはちみつワッフルが美味しかっただけだった。

 

まぁそんなもんだよな、自分を変えてくれた人、そんな人はすぐ会えては困るのだきっと。

 

スタバを出た。

 

47分の電車に間に合わなそうなのでトイレに行った。

 

下北のあの長い長い下りエスカレーターに乗り込む。

 

このエスカレーターは上りのエスカレーターとの距離が近くて目が合うからあんま好きじゃない。

 

...。

 

...!

 

目が合ってしまった。

 

正直、すぐ分かった。

 

茶色のタータンチェックか何かのジャケットを羽織っている、珍しく。

 

コンタクトなのだろうか、眼鏡はしていない。

 

上を少し見上げ、睨んでいるのか睨んでいないのか、そんなような表情。

 

会えてしまったのだ。

 

挨拶をしようか、どうしようか、本当に悩んでいたはずだが、すぐ声が出ていた。

 

「...!...!ど、どうも!」

 

あの人は体感2分私を見て、途中からrecognizeした。

 

「あ!」

 

エスカレーターはわたしたちを待たない。

 

あの人の、あ!を聞いてからすぐ我に帰った。

 

あ、じゃないんだよ...。

 

"「あ」しもとちゅうい"

 

あ、じゃないんだよ....。

 

あそこで分かった自分きもいな。

 

あ、じゃないんだよなぁ...。

 

マスクの中で何回も言った、あじゃないんだよ。

 

コロナ禍で無かったら自分は電車の乗客にきっと距離を置かれていた。

 

会えたのに嬉しくないのか、なんなのか。

 

はぁ、というため息が次いで出る。

 

「電車が通る際の強い風にご注意下さい」

 

風強っ...スマホ煽られそうになったわ。

 

多分、きっと、やっぱりあの人を心のどこかに追いやるのは不可能なのかと思って、のため息なのかな。

 

追いやろうとすると、すぐ存在を光らせてくる。

 

これは恩人としてなら追いやる必要も無ければ、存在がどんだけ光ってもらっても構わないのだが。

 

そうではなさそうなのが厄介なのである。

 

こうしてまた自分は良い卒業の仕方を考える。

 

何も言わず、スッと卒業しようとしてたけど、やっぱり何か根強く残ってもらいたいのかな、自分は。

 

私的な場所で会えた幸せよ、奥底にある気持ちを証拠づけるこの幸せよ。

 

 

 

 

しかし冷静になって考えてみると、ただ、たまたま会えただけ。

 

物書きのコスパが良い。

 

悲しいくらいにコスパが良かった。